「朝」
長い前髪の隙間から、
戸惑いに濡れた双眸が覗く。
貌を背けて、視線を泳がせながら、
熱で乾いた口唇を湿すように蠢いた紅い舌先に、どきりとした。
肩にそっと触れると、一瞬、電流に打たれたように身体を震わせた。
「大丈夫か?」
「何がだ」
淡々とした言葉が、間髪置かず即座に返ってくる。
その返答の間の短さが、却って不自然だよ、御剣。
もう既に素直でなくなっている君が、
ありえないくらいに素直だった昨夜のことをふと思い返す。
途端に、頬が緩む。
「何が、可笑しい....!」
眉間に深く縦皺を刻みながら、思いきり睨み付けられた。
普段は冷たいほどに鋭い眼光も、今はとろりと濡れているから、
そんな威嚇なんて新手の誘惑にしか見えないのだけれど。
あぁ、
今、君を抱き締め、君にキスをしたら
またぶん殴られるだろうか。
怒りに震え、
羞恥に震え、
その、普段は慎ましく引き結んだ口唇が、
戦慄く様を、僕は見たいと思うのだ。
「好きだよ、御剣」
掠め取ったキスの代償として、
間髪置かず、思いのほか強烈な平手をお見舞いされた。
「痛いじゃないか」
「......当然の報いだ」
この甘い痛み。
最高だ。
